株式市場では2つの心理と戦わなければなりません。1つは自分自身の心という心理です。そしてもう1つは、株価を実際に動かす市場参加者の心理です。市場で利益を得るには、この2つの心理戦に勝つ必要があるのです。
■自分の心に勝つ!!
業績・過去のチャートをよく吟味し、「これはいける!」という銘柄を買いました。順風満帆かと思いきや、株価は買値をズルズルと下回ってしまいました。こんな時どんな心理状態になるでしょうか?
強気の時・・・「なあに、すぐにまた上がってくるさ」
弱気の時・・・「ああダメだ・・。もっと下がったらどうしよう」
この対照的な心理状態はこの後の売り方に大きく影響します。例えば、1000円で購入した株が900円まで下がってしまいました。その後再び上昇し始め1000円に近づいてきました。弱気の人は「やっと戻ってきた。多少の損でも早く売ってしまおう」と思うはずです。強気の人は、「いよいよ反転したぞ。これからどんどん上がってくれ」と売らずに持ちこたえることができます。この場合往々にして株価は底打ちし上昇トレンドに入っていることが多く、我慢していれば大きな利益が得られたことでしょう。買うときに「これはいけると!」と確信できた訳ですから当然かもしれません。
買値付近で売ってしまった人は、株価が1度買値を下回ったことにより、弱気の心理状態になってしまいました。自分の心に負けてしまったのです。
■自分の心を弱気にさせるもの
株価が同じように値下がりしても、強気のままでいられる人と、弱気になってしまう人といます。この違いはどこから生まれるのでしょうか。
まず、自分の性格があります。楽天家でしょうか。心配性でしょうか。自分の性格について正しく自覚しましょう。(変えるのは難しい)
そしてここが大切なところですが、自分は幾ら損が出ると冷静さを失って判断に狂いが出るのかを知る必要があります。資金のなん%をつぎ込むと売買が硬くなってしまうでしょうか。許容できるリスクはどれぐらいでしょうか。それを見極め自分の許容量を超えた取引をしないようにします。これが守れれば、おそらく強い心理状態で市場に向かうことができるでしょう。これについては、「2.自分の投資スタイルを確立せよ」でさらに詳しく説明します。
■群集心理に勝つ!!
株式市場で実際に株価を動かすのは一人の人ではなく、大勢の市場参加者です。大勢の人が集まると、そこに群集心理が生まれます。群集心理が働くと時にとんでもない方向へと人々を加速させます。しかし、ひとり、またひとりと自分たちがおかしな行動をしていることに気づき始めます。そしてだんだんと正しい方向へと戻っていき、群集は解散します。最後まで気づかなかった人が最後まで間違った場所に取り残されてしまいます。
これを株式市場でするとどうなるでしょうか?初めは良かったものの、気がついて見れば、おおよそ適正価格とは言えない、超割高な株券と膨大な含み損だけが手元に残ります。こうなったら、市場で損を取り戻すのは容易なことではありません。あせって売買し、かえって損が膨らむばかりです。
ですから、ある出来事に異常な群集心理が働いているとき間違ってもそれに近づいてはなりません。それが群集心理に勝つということです。
■デイトレードにおける心理戦術
これまで書いてきたことは、株式投資一般に当てはまる心理面です。
では、デイトレードにおける心理戦とはどのようなものでしょうか?
デイトレードでも基本は一緒です。しかしデイトレードは1日に何回も売買を繰り返すわけですから、より強い精神力、そして自分の心理状態をコントロールする力が求められます。中・長期投資にはない心理戦術も身に付けていかなければなりません。
■板情報から群集心理を読む
デイトレーダーにとって最も重要な情報は、気配値と板情報です。それに5分足などの日中チャート、過去の日足チャートなどを組み合わせて、売りなのか買いなのかを判断します。この板情報こそ、その銘柄に対する群集心理を数値化したものなのです。売り注文に対して多くの買い注文が出されていて株価が上昇していれば、それだけ強気の心理が働いていることが分かります。揉み合いが続いているならば弱気な参加者と強気の参加者が半々というところでしょう。高値を付けた後、株価が下げに転じれば、そろそろみんなが弱気になり始めていることの証拠です。こうしたおおよその群集心理が板情報をよく観察していれば分かります。
■だましの板情報に惑わされるな
板情報を見ている投資家個人も心理的な影響を受けます。例えば、さっきまで強気でいた人も、売り板がどんどん厚くなっていけば、心理は弱気へと一転してしまいます。これがさらに売り板を厚くさせ、弱気の群集心理を加速させます。この心理状態を利用して株価を操作しようとする悪い投資家もいます。実際には売るつもりがないのに少し上の気配値に多量の売り注文を出します。弱気になってしまった人は思わず、自分の持ち株を売ってしまいます。こうして操作した人は株価の下がったところでひそかに買っているのです。逆に多くの買い注文を見せてひそかに売り抜ける投資家もいます。冷静な心理状態でいれば、だましにはすぐに気が付きますが、弱い心理状態になっていると容易にだまされてしまいます。メンタルな面をトレーニングして、だましを見抜き利用するぐらいの強い精神力を身に付けましょう。
■順張りか逆張りか
デイトレーダーの多くが順張りを得意としています。つまり上昇している銘柄を素直に買い、値下がりしている銘柄をカラ売りするという具合です。この方法は欲張らなければ、成功する確立は高いのですが、失敗したときの損失も大きくなりがちです。(最近は逆指値注文などでリスクを最小限に抑えることもできますが、リスクを小さくとると、それだけロスカットが働く確率を高めてしまいます。)特に上昇上位銘柄などを狙うと、当たった時は大きな利益を手にすることができますが、失敗した時の損失も大きくなります。売買履歴を公開しているデイトレーダーさんのホームページを見ますと、1日に30万円以上の利益をあげている日もあれば、30万円のマイナスもあります。
一般的なデイトレーダーとは反対に、逆張りで利益をあげているデイトレーダーもいます。株価が下落しているものの中から買戻しが入る場面を狙うという方法です。この方法では大きな利益を狙うことはできませんが、失敗してもそれほど大きな損失にはなりません。(ロスカットルールを守れば)わたしの投資スタイルも逆張りです。順張りにするか逆張りにするか、あるいはその両方を組み合わせるかは、やはり自分の許容できるリスクをもとに決定するのが良いでしょう。
■買いたい衝動に勝つ!!
順張り型のデイトレーダーに多く生じる戦いです。買いたいと思った銘柄が注文を出そうとしている間に上昇してしまいました。追いかけて買うべきでしょうか。それともチャンスを逃したとあきらめるべきでしょうか。「今買わなければもっと上昇してしまう!」という衝動に負けて無理をして買うと、ほとんどの場合失敗します。急上昇したあとには、必ず押し目が入るからです。買う段階で無理をしていますから、値下がりによる不安は通常より大きくなります。その結果、押し目の一番安いところで損切りし、その後で株価が上昇するとということがよくあります。買いたいと思った値段で変えなかったときは、チャンスを逃したとあきらめ、他の銘柄を探しましょう。何しろ買うことのできる銘柄は3000以上もあるのですから。平常心が大切です。
■ロスカットルールを守れるかという戦い
大抵のデイトレーダーは2つのロスカットルールを守っています。
1.買値より何%(あるいは何円)下がったら損切りする
2.その日の大引けまでには必ず決済する
この2つがデイトレードの基本ですが、これを徹底して守るには、頭で考える以上の精神的な強さが求められます。売った直後に株価が上昇することもあれば、次の日に大幅高で寄り付くこともあるからです。ですから、売ってしまった銘柄のことはいつまでも考えることがないようにしましょう。「持っていれば幾ら儲かった」と考えることは、心理面に良い影響を与えることは1つもなく平常心を失わせるだけです。それよりも、2つのロスカットルールを冷静に実行し、次の売買が、そして翌日の売買が、ゼロからスタートできることが、デイトレーダーの理想的な姿なのです。
■8割は心理的な要素で決まる!!
自らもデイトレーダーで「デイトレード」の著者であるオリバー・ベレスは「本質的に、トレーディングの8割以上は心理的なもの」と書いています。私も全くその通りだと思います。株式市場で利益を得たいなら、売買の技術を磨く以上に、自分自身のメンタルな部分を鍛え、人間の心理や群集心理に対する関心と研究を怠ってはなりません。
このページの中では人間の心理がいかにトレードに影響を与えるかについて説明してきましたが、これがこのサイト全体のテーマともなっています。ところどころに私が読んで役立った書籍などを紹介しています。図書館などで借りることもできるので、ぜひ一度お読みください。デイトレーダーを目指すあなたにこのサイトが少しでもお役に立てたらうれしく思います。
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著者:ジェイク・バーンスタイン / 青木俊郎
出版社:東洋経済新報社
本体価格:2,800円
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投資の行動心理学 |
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